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・臆病な天使たち

2011/10/06

 愚作「酒が悪い」を先に読んでるといいかもしれない。かもしれない程度の話ですが。
「ん……フロン、さまぁ?
いらっしゃいます……?」
「はーい、なんですかアルティナちゃん」
「フロンさまは、どうして……。
どうして、天界に、戻られたん、ですか……?」
「えーと、それは。
ラハールさんやエトナさんたちのいた魔界から、どうして離れてしまったのかってことでいいのかしら?」
「はい……」
「どうして、アルティナちゃんはそんなこと訊ねようと思ったの?」
「……だって。
わたくしは、そんなのできるのか、わからなくて……」
「できるって?」
「今のこの、お世話になっている地獄から、天界に戻ろうと思える日が来ると、思えないんです……。
相変わらず、わたくしの羽は白いままで、堕天使でもないから、悪魔の皆さんからは、珍しく見られがちで……。
けど、…………けれど。
……わたくし、離れたく、ありません……」
「どうして?」
「………………」
「好きな人のそばを離れるのは、嫌ですか?
ずっと一緒にいたいって、思ってますか?」
「……はい」
「……そうでしょうね。
少なくとも、アルティナちゃんは好きな人に四百年間会えなかったわ。だから、会えた今ならそう思うのは当たり前のことです。
寂しくて、それまで会えなかった分、押し殺していた分だけ、あなたはあなたの好きな人のそばにいなさい」
「……はい」
「わたしはね、……アルティナちゃん。
すごく楽しかったの。
おふたりのそばにいて、喧嘩を止めたり仲を取り持ったり、たまに自分がフォローされちゃったり、いろんなことが楽しかったの。
楽しくて楽しくて、あっと言う間に時間が過ぎて、恐いくらい……ううん、違うわ。恐かったの」
「……こわ、い?」
「そうよ。いつまでも三人でいるのが楽しくって、それが当たり前でいるのがね。
……エトナさんがラハールさんのもとを離れて行ったときに、わたし、もとの三人で、プリニーさんたちも含めて、みんなで一緒に、前みたいに過ごしていたいって強く祈っていたわ。
けれど、三人に戻って一緒にまた暮らしていくうちにね、よくよく考えてみたら、そんな願いはよくないことなんじゃないかって思ったの」
「……そう、なんですか?」
「だって、それって変わらないってことじゃない。
わたしは悪魔の方々にも愛があると教えるため、愛を広めるため魔界に修行に行ったのよ。
変わらないってことは、わたしの修行は無意味ってこと。ラハールさんは相変わらず愛を認めようとしてくれなくて、悪魔の皆さんにも流される。
……魔界での生活は楽しかったけど、それって振り返ってみたら、どうなのかしら?」
「………………」
「あちらの魔界にいる皆さんのことは、今でも大好きよ。
エトナさんも、ラハールさんも、愛しているわ。
……けど、愛を認めてもらうためには、ずっと一緒は駄目なの」
「……フロンさまは……」
「なあに?」
「フロンさまは、……ご立派ですね。
わたくしには、真似できそうにありません……」
「ふふっ、真似する必要なんかありません。あなたはあなたの方法で、悪魔さんたちに愛を伝えていきなさい。
……それに、アルティナちゃんは天使長になりたい訳じゃないでしょう?
ま、わたしも出世したくてラハールさんたちから離れた訳じゃないんですけど」
「愛を広めるため、ですか……?」
「ええ、その通り」
「……だったら、フロンさまは、寂しく、ないんですか?
それまで仲良くしていたひとたちと、離れても……」
「……アルティナちゃん、あなたはもとは人間だったから、こんな考え方はあまり理解できないかもしれない。
けれどね、わたしたち天使や悪魔は、人間と比べて長命で、変化も人間ほど劇的ではありません。
だから、その分耐えられるのよ。希望があるの。
いつか、……いつかわたしが自分の行いに満足したときに、大好きなあそこに行こうって、思えるの」
「…………」
「それに、わたし信じているわ。
わたしが覚えている限り、わたしが愛しているひとたちもわたしのことを覚えていてくれるって。
わたしが愛している限り、わたしのことを、……」
「…………」
「……愛してくれていると、嬉しいかな。ええ、信じてる。
ね、アルティナちゃん?」
「…………」
「あら、また眠っちゃいました?
……ふふ、ならそっとしておきましょうか」
「…………」
「……あなたも。
あなたが愛しているひとは、きっとあなたを愛しているわ。
だから、ね。……信じてあげて?」
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