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・雰囲気に酔うと恥ずかしいこと平気で言えるよね

2011/07/29

下のを読む前にまずこっちから読んでね。
 甘く、緩く、白磁の肌を食んでゆく。痕がつかないくらい軽く、けれどいたぶるようにねっとりとした動きを舌に乗せ。
 女はそこから生み出される感覚に喉奥からせり上がる声を堪えるよう下唇を噛むけれど、瞳の潤みは視線が逸れようが瞼が伏せようがどんな仕草であっても誤魔化せない。
 その事実に薄らと笑いながら、頬の内部を窄ませ軽く食んだそこを吸う。ちゅくと、高い水音が立って肌の凹凸がいっそう咥内で明確となる。
「んぅっ……」
 か細き悲鳴は蜜滴る果肉の香りに程近い。舌で味わう感触もまた、自然と唾液を溢れさせるなめらかさと張りに満ちており、それを確かめることで胸の奥が熱を持つ。頭の奥もまたぼんやりと甘露に酔うており、知性など霞と消えてゆきそう。
「……甘いな」
 けれどすぐさまこの場で言葉を捨て去るのはなんだか酷く惜しい気がして、細指を口から静かに引き抜くと喉が声を取り戻す。
 女もまた同じなのか。薄闇のなかでも鮮やかに輝く瞳が居心地悪そうに、熱っぽい夢から醒めたぎこちなさで瞬いて、引きつる声が熱い吐息とともに零れる。
「あ、甘く、なんて……。人の肌が、そんな……」
「嘘は吐かん。……甘いとも、お前の肌は格別に」
 そう。もう一度とは言わず二度も三度もいやそれ以上にずうっと味わいたくなるくらい。そんな気持ちを込めて拘束したままの手のひらの甲を親指だけでくるりと撫でると、小指がくの字に折れ曲がる。そんな微かな動きすら、今は何故だかいやに妖しい。
「そんなこと、仰るんでしたら……血を、吸ってくださ……」
「それはまた、別の問題だ」
 その通り。吸血鬼にとっての吸血は、生死や魔力の有無に関わる重要なことではあるけれど、今なら多少に野暮な話。この灯りを消した部屋で向かい合うふたりは今、人間と吸血鬼ではなく、即ち贄と捕食者ではなく、男と女なのだから。
「……甘いな」
 沈黙を、笑みを含んだ声が打ち消した。手のなかには味わった女の手のひらがあるけれど、またそれを口に含むでもなく記憶のなかで味わった感覚を確かめるよう呟いて。対する女は不可解そうに、口先を軽く尖らせる。
「何も、……口にして、いらっしゃらないじゃないですか」
「それはそうだが、やはりお前は甘い。どこもかしこも」
 悠然と答えた最後の一言に女の手が強張って、息を呑む音が耳朶をくすぐる。ああ、理性が炎の羽根で撫でられる。とろりとろりと融けてしまう。
「……そんなこと」
「甘いとも」
「甘くなんて」
「甘い」
 断言した直後に衣擦れの音が覆い被さり、反論を重ねようとした唇がくぐもった悲鳴に転ずる。口を通して女の声を耳にしながら、喉の奥で笑う。
 こんなことをしてしまうなんて、もしや女の香気か旨味に酔っているのかもしれない。ああ否しかし、それならばもう存分に。――この女の総てに、とっくの昔から狂うていたか。
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