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・救ってくれたひとだから

2011/07/13

「ああ、ヴァルバトーゼ君。ちょっといいかな」
「……いい加減、貴様も『ッス』をつけんか」
「今くらいはいいじゃないか。ちょっと話をするだけなんだしさ」
「プリニーにはちょっとも糞もない。特に貴様は、この魔界の歴史の中でも最高額を設定された最も罪深きプリニー。
こんなところで油を売っている暇があるなら、とっとと働け」
「おお、恐い恐い。じゃあ用件も最低限にするとしよう」
「お前、俺の話を聞いて……」
「――ヴァルバトーゼ君。アルティナさんのこと、本当にありがとう」
「……何だと?」
「じゃあこれでボクは失礼するよ。君の言う通り、時は金なりだしね」
「待て、ネモ。それだけでは俺が納得せん。
どうして貴様があいつのことで俺に礼をするのか、理由を教えろ」
「今後、君が彼女を守ってくれるんだろう?」
「……それは無論。約束した以上は、当然だ。
そもそも、これでまたあいつを死に逃がせば俺は再び血を吸う機会を失うことになるからな」
「今更照れなくたっていいと思うがねえ。
あんな大告白ぶちまけたんだからさ~」
「あ、あれは告白ではないわッッ!!」
「あーはいはいそうだねそうだったねー。……ま、正直なところを言うとね。
四百年前から君が彼女を気にかけてくれていた。それだけでも、ボクは随分救われたんだ。
だから礼を言ったのさ」
「……四百年前、か」
「ああ。四百年前、君が彼女を守れず辛い思いをしたのは理解しているつもりだよ。
それはボクだって同じ。あのときベッドからほとんど動けなくて、アルティナさんが急にいなくなった理由もすぐにはわからなかった。
彼女が死んだと知ったときだって、あの日からいくらか経ってからでね……」
「…………」
「ボクはね、ヴァルバトーゼ君。
あのとき、彼女を救おうとするひとがいなかったこともそうだけど、死んだ彼女を悼むひとが、自分以外一人もいないと思い知らされたのが何より辛かった。
あんなにボクたち怪我人を生かすために努力していたひとが、他人のために自分の身を削るような優しいひとが、誰からも顧みられないなんて。
無償の愛を振り撒いていながら孤独の只中にいて、単に利用されていただけだなんて思ってもみなくて……本当に辛くてね、絶望さえ覚えた」
「…………」
「慕っているひとがいたからこそ、彼女はきちんと弔われたんだと後々気付きはしたがね。
当時彼女はスパイ容疑をかけられて死んだから、その墓の周辺に近付けばまた自分も同じように怪しまれるかもしれないと恐れた奴はいたんだろう。
しかしそれだって結局、生きるための理屈を優先させた結果だ。ボクみたいに、墓を見つけ次第咽び泣くほど彼女への気持ちを優先させた奴はいなかった。
……ボクみたいに、彼女をずっと憶えていようと思う奴もね」
「……だからお前は、あいつのために世界への復讐を企てたのか」
「そうなるかな。……多分ね、ボクがあのとき君の存在を知っていたら、復讐なんて思いつかなかった。
ボクと同じように、彼女を想い、いつまでも憶えていて、あのとき何もできなかった自分に強く後悔していた誰かがいると知っていれば……。
まあ尤も、それならそれでどうして君は彼女を救えなかったんだと怒っていた可能性はあるがね」
「俺はあのとき、あいつを守れなかった。あいつを殺した連中を殺さなかった。……それについて、弁解の余地はない」
「ホント悪魔だってのに真面目だねえ、君は。
けど、そこまで気に病む必要はないよ。君は四百年前から彼女の味方だったんだろう。それを知っただけで、ボクは……」
「…………」
「まあ君だけじゃなくて、天使長さんだったかな。彼女にも、アルティナさんのことについては感謝してもしきれないほどだけどね」
「うむ。それについては同意しておこう」
「ああ。……今になって思えば、彼女はボクが思っていた以上に幸せだったんだ。数は少なくとも、彼女を見て、慕うひとはきちんといたんだからね。
そりゃあ絶望なんてしないはずだよ。世界を壊しちゃいけないと、四百年間、必死になってボクに呼びかけるのも頷ける」
「……反省しているようだな。結構なことだ」
「はは、そりゃあねえ。
じゃあまあ、今度こそ失礼するよ」
「うむ。ひたすら働き罪を償うが良い、それが今のお前の唯一の贖罪なのだからな」
「へいへい、了解致しましたッス!」
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